【コラムっぽいもの】最近話題の同人誌違法アップロード云々について

十数年も議論され続けている問題ですが、最近ツイッターで話題が再燃している感じなので、色々と書いてみましょう。
ここでいう同人誌とは、元ネタとなる商業作品が存在するもの、いわゆる二次創作を指します。ネットに違法アップロードされているものはだいたいエロ漫画ですが、非エロも含みます。そしてオリジナル作品については対象外となります。オリジナル作品や商業作品については議論の余地がないので。

まずは全体のまとめ

同人誌。書いて字のごとく、同人の雑誌です。同人とは「同好の士をもった人たち」というとわかりやすいでしょうか。まぁ趣味の合う人同士で作る雑誌ですね。昔は文学作品が主だったそうですよ。そんな起源はともかくとして、今では一般的に、アニメや漫画など人気商業作品キャラにエロいことさせてる二次創作の本のことを同人誌と呼びます。アニメや漫画のキャラ絵に抵抗がない人ならば、ぶっちゃけ誰しも一度は、違法アップロードされたものを見たことがあるでしょう。

コミックマーケットを筆頭とした同人誌即売会や、書店委託などを通じて、日本に普及している同人誌は、先ほど「誰しも見たことあるだろ」と述べた通りに、ネットに違法アップロードされて気軽に見ることができるというのが蔓延しています。まぁ違法アップロードは商業作品でも同様にされていますが、ここでは同人誌に関する話なので深くは触りません。

違法アップロードについて、作者としては当然「やめてくれ」と思いますし、そう言う権利を持ちます。しかし同人誌はそもそも二次創作物であり、存在そのものが厳密に言えば違法です。結果として「お前が言うな」ということになりやすく、また個人では削除申請が追いつかないことで、違法アップロードは商業作品以上に蔓延しています。

同人誌は大きくなりすぎた

同人誌は違法という面がありながらも、日本の一つの、大きな文化となりました。そこには「趣味だから」という前提があったからです。商売っ気ゼロ。売り上げは印刷費に消え、利益なんて出ていない。赤字も余裕。それでも自分の趣味として、ファン活動としてやりたいんだという前提があったからこそ、多くの著作主は黙認という立場を取りました。

しかし同人作家は人気を増し続け、「その利益で生計を立てている」という人が多数存在する状態になりました。ここまで来ると「趣味だから」とは到底言えず、大きすぎるサークルには権利者がNOを出したりします。今ではもう10年以上も前になりますが、マリグナントバリエーションという作品があり、人気が出すぎて4万枚もプレスした結果、権利者からクレームが来て販売中止となったことがありました(販売中止になったマリグナントバリエーションFINALはニコニコ動画に違法アップロードされている[前半][後半])。その頃からでしょうか、趣味の範疇を明らかに超えている同人誌についての議論が盛んになったように感じますね。

趣味の範疇を突き抜け、権利者からクレームが来る二次創作物。これはもはやただの著作権侵害コンテンツであり、違法性の話でよく出るグレーなんていう生やさしいものではなく、純ブラックです。大きくなりすぎたことでいよいよ、グレーという言い方では表し尽くすことができなくなってきたわけです。

正論だけでは語れない

同人誌は存在そのものが違法(一次著作物への著作権侵害)ですが、だからと言って二次著作物としての著作権が存在しないわけではありません。そのため「お前が言うな」とは成立しません。お前が言ってもいいんです。殺人鬼の被害者遺族が仇討ちをしても殺人罪になるのと同様に、加害者だから何をされてもいいというのは、法治国家では成立しない論理です。

「お前が言うな」こそ成立しませんが、「お前も違法なことをやるなよ」は成立します。悪いことはしちゃダメだよと咎めるだけですからね。では、正論として、悪いことは全部しちゃダメだよと言い、同人誌の世界から違法なことを全て取っ払うとどうなるか。まぁ同人誌が消滅するわけですね。あえて悪いように表現すれば、人気作にタダ乗りして設定借りパク原作レイプで利益を出しているのが現代の同人作家です。もう一度書きますが、あえて悪いように表現していますよ。同人作家というのは結局のところ違法作家なんです。しかし同人作家自身はそれで稼いで生きている以上、それができなくなるのは困り、自分だけはOKと思う必要があります。
結果として、同人作家は「俺は違法なことをする俺に違法なことはするな」というジャイアンみたいな自分本位のダブルスタンダードに陥ってしまいます。ダブスタは叩かれますよね。ここが商業作品(一次著作物)との決定的な違いです。

立場が違うだけでどっちもダメだから扱いが難しい

同人作家は、一次著作主に対する著作権侵害の加害者です。
その内容としては、著作主に無断で作られた雑誌によって「キャラクターイメージの毀損」などが挙げられるでしょう。

違法アップは、一次/二次著作主に対する著作権侵害の加害者です。
その内容としては、著作主に無断でネットを経由した配布によって「送信可能化権の侵害」などが挙げられるでしょう。

ただただ正論だけで語れば、どちらもダメであり、どちらかだけOKだったり、どちらもOKということはないのです。やっている内容が違うだけでどちらも似た加害性を持ちます。だから、扱いが非常に難しいのです。

同人作家は「権利主からクレームがきたらやめる」と言います。では違法アップも「権利主からクレームがきたら削除する」でいいのでしょうか。ダメですね。

同人作家は「俺はコレで飯を食べてる。違法アップされたら生きていけない」と言います。では違法アップも「俺はコレで飯を食べてる。違法アップしないと生きていけない」で許されるのでしょうか。今はアップロードしたファイルのダウンロード数や容量で報酬を得られる時代なので、本当にそれで生きてる人いますよ。でも、ダメですね。

同人作家は「二次創作とは言え、自分で描いてる。タダ乗りしてる違法アップとは違う」と言います。でも違法アップはいわば「仲介業」です。自分で生み出すだけが仕事ではありません。じゃあいいのかというと、ダメですね。

同人作家は常に「じゃあお前もやるなよ」と言われると反論の余地がない、危うい立場にあります。近年の日本は是か非かの二極論を求めやすく、そういう危うい立場を認めない方向に進みつつあります。では同人作家を潰していいのかというと、それもまた違うでしょう。あまり良い意味ではないと思いますけど、同人誌は世界的に知られる日本文化の一つになっています。私はどちらかと言えばエロ容認派ですし、誇っていいと思うんですよね、日本のHENTAI文化。

なあなあにするしかない

今の日本は、著作権法の非親告化に進んでいますね。しかしこれを真面目にやると、同人誌というかコミケが消滅します。アレ、言ってしまえば大量の犯罪者の集会場なので。同人誌などのグッズに限らず、コスプレ撮影会も衣装が著作権侵害ですし、設営スタッフも幇助したとみなされるでしょうから、たぶん全員逮捕ですよ。原作者がいいよとどれだけ言おうと、警察の判断で逮捕し、検察が起訴できるようになります。警察の得点稼ぎには最高の場所ですね。

また欧米のように著作権法にフェアユースを定めようにも、同人誌はその多くがエロ本で、しかも多大な利益を上げています。これでは誰がどう考えても公正な利用とは言い難く、フェアユースで保護するには無理があります。フェアユースで保護されるかどうか、単純でわかりやすい判断方法としては「ディズニーがOK出すか?」ですね。それでだいたい判断できます。
ネットにはあまりアップロードされることのない、非エロの、売り上げも印刷費でトントンになるような本来の意味での同人誌がギリギリ生き残りますが、ぶっちゃけそれらは今でも違法アップロードに悩まされてないので、この議論の範疇に含まれません。

結局のところ、同人誌と違法アップロードは共存するしかないでしょう。そうしないと一緒に滅びるしかないので、他に道がありません。
「違法アップロードを認めろ」とは決して言いませんし、見つけ次第削除申請はし続けるべきだと思います。それでも存在してしまうことは、穏やかな心で「しゃーねぇな」と、なあなあ状態にしておくしかないでしょう。同人誌自体が、一次著作主から「しゃーねぇな」となあなあにして貰っていることで存在できているので、それと同じ考えをするしかないのです。あまりにも目立った同人作家がNGを食らうように、あまりにも目立った違法アップロードサイトは潰れていきます。
一次著作物コンテンツに寄生するのが同人誌で、同人誌に寄生するのが違法アップロードです。それらの入手経路はともかくとして、どこかから一次著作物の存在を知った人が、そのコンテンツを好きになってくれたらいいねと前向きに考える。これが穏やかで一番平和な考えだと思います。

これと似たような事例としては、ゲームプレイ動画の配信が、いい感じに進んだ道だと思います。
かつてはゲームプレイ動画はアングラの話で、権利者からの削除も盛んに行われていました。しかし今では各社がその宣伝効果を実感し、配信を認めています。ゲームはエロ本と違い、プレイする側と見る側で違う楽しみ方があり、エロ本はほぼエロいことにしか使われませんが・・・コミケの会場の雰囲気など、そこでしか得られない付加価値が他にあり、どれだけ違法アップロードが盛んになろうと、現物を求める声はなくならないはずです。

おまけ:違法アップロードを消す唯一の手段

商業コンテンツのアニメや漫画も同様――というかそっちが主流かな――ですが、違法アップロードを消す唯一の手段があります。
それは全て無料でネット配布するというものです。その上で、お金を払うとより高速にダウンロードできるとします。ここで重要なのは、無料版のダウンロード速度は激絞りであることと、ダウンロード速度が違うだけで有料版と中身は同一ということです。映像画質とかに差をつけてはいけません。ここで支払われるお金とは、コンテンツそのものではなく、快適さに対して支払うものとなります。コンテンツはタダで、快適さが有料。これからの時代、そういった収益構造を持つサービスはどんどん出てくると私は思います。これ10年くらい前から言い続けてまして、実際にそういうサービス増えてますよね。

まずそもそもとして、違法アップロードファイルが置かれている海外のアップローダが、この手段で収益を上げていますよね。その収益をアップロード者に配分することで更に利用者を増やすことに成功していますので、かなり儲かっているはずです。そして他の分野も見てみて下さい。携帯キャリアでは、月間通信量xxGBを超えても通信ができないわけではないのに、多くの人が容量を買い足して高速通信を求めます。そして通販でも、待てばそのうち届くのに、早く届くために優先配達オプションを付けます。いずれも、手に入るものは同じなのに、早く手に入れるがために、快適に手に入れるがために、お金を払っています。世界でも日本でも、様々な分野で快適さにお金を払うという収益構造が成立しているのは、紛れもない事実です。
これをアニメや漫画なんかにも取り入れてしまえばいいわけですね。公式から無料で手に入るなら、わざわざ違法アップロードサイトからダウンロードしようとする人はいませんから、違法アップロードは限りなくゼロに近くなるでしょう。そして海外アップローダのプレミアムメンバーに流れているお金は公式が回収できます。絶対にお金払いたくないマンもいるでしょうけど、彼らには「無料で見られたら悔しい」と思うのではなく「無料なら見てくれる潜在的な見込み顧客」と思うべきです。

インターネットが発展すればするほど、違法アップロードはより容易になり、いたちごっこでは対処できなくなります。そして発展に伴い快適度が向上しますから、快適さへの課金の付加価値は高まり続けます。快適さへの課金という収益構造は、今後更にニーズが高まるはずで、まだまだ広まっていくビジネススタイルだと考えます。

PS.あと特にアニメ市場だと、テレビ放送を見れば無料でソコソコ画質なのに、金を払ってネット配信を見るとクソ画質と化し、DRM制限もあって不便なんで悲惨なんですよね。お金を公式に払うより、違法アップロードを利用した方が綺麗・便利とあれば、そりゃ違法アップロードを利用しちゃいますよ。そっちの方が便利なんですから。お金払って不便を買うって純粋に最悪です。

コメント

  1. 匿名 より:

    全体として筋は通っているし、主張に関して特に異論はないのですが、
    「同人=二次創作」という認識だけは、間違っているので訂正して欲しいです。
    エロで言うなら、特定の作品でなく性癖を題材にした物が数多くありますし、
    エロでない物でも、雑誌の方は知りませんが、ゲームであればオリジナルの作品は多いです。
    「ひぐらしのなく頃に」なんかも元々は同人ゲームでしたし……

    もしかしたら分かっていた事かもしれませんが、
    文章からはその辺り誤解しているように読み取れてしまったので、念のため。

    ちなみに個人的には「F宅」っていうサークルがオススメです……
    たぶんなるせさんも好きだと思います……

  2. 匿名 より:

    ボウトウヨンデナカッタスンマセン

    1. 管理人 より:

      はい。冒頭に書いてました。オリジナル作品に関しては議論の余地なく「違法アップロードダメ絶対」ですからね。個人か法人かって違いがあるだけで、モノとしては完全な一次コンテンツですし。
       
      ちなみに、「F宅」は女の子が気持ちよさそうに描かれてて、好きです。

  3. 匿名 より:

    面白い記事でした。

    「快適さに対してお金を払う」ビジネスモデルで、
    一番の成功例はソーシャルゲームのガチャなのかなって気がしますね。
    無課金だと、シナリオを進めるだけでも大抵膨大な作業量を要求されるので。

    1. 管理人 より:

      ガチャは射幸心を煽る点から、快適さへの課金というよりは「ギャンブル依存症からの搾取」がより適切な表現の気がしますね。快適さとの合わせ技でもありますが。
      ソシャゲだと、最近は下火になっていますが「スタミナ課金」が、まさに快適さに対する課金だったのかなと思います。待てばチャージされるけど、お金を払えばすぐにできるよっていうのは、まさに快適さへの課金だと思います。

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